この記事を読むとわかること
- ▶単純型・複雑型熱性けいれんの鑑別ポイントと紹介基準
- ▶ダイアップ坐剤のメリット・デメリットと処方例
- ▶保護者の不安を和らげる説明の伝え方・言葉の選び方
- ▶帰宅時に必ず伝える「けいれん時の対応手順」
皆さん、こんにちは。
あまが台ファミリークリニック 院長の細田俊樹です。

私はプライマリ・ケア(総合診療)を専門に、医師として25年目になります。家庭医療専門医として地域の外来診療を続けてきた中で、熱性けいれんはかかりつけ医として最も緊張感を持って対応する疾患のひとつです。
今回は、当院で研修している先生方への情報共有も兼ねて、最近増えている手足口病に伴う熱性けいれんへの外来対応について整理しました。単純型・複雑型の鑑別から保護者説明のコツまで、現場の機微を含めてお伝えします。
最近、当院でも手足口病の初期に熱性けいれんを起こして受診するお子さんが増えています。直近で私が担当した症例だけでも2例が手足口病の経過中でした。
熱性けいれんは医学的には良性の疾患ですが、目の前でお子さんがけいれんを起こしたご家族にとっては、極めてショッキングな体験です。その場の診療判断だけでなく、「帰宅後も安心してもらえるか」「次にけいれんが起きたときに正しく対応できるか」まで含めて対応することが、かかりつけ医の役割だと考えています。
目次
STEP 1|まず「単純型か複雑型か」を確認する
熱性けいれんの外来対応で最初にすべきことは、単純型(単純性)か複雑型(複雑性)かの判断です。この鑑別が、その後の対応方針すべての分岐点になります。(※1)
単純型熱性けいれんの目安(以下をすべて満たす)
- ✓全身性のけいれんである
- ✓左右差がない
- ✓15分未満で自然におさまっている
- ✓24時間以内に繰り返していない
- ✓けいれん後に意識が徐々に戻っている
- ✓発達・神経学的異常がない
上記をすべて満たす場合は、単純型熱性けいれんとして当院で対応できることが多いです。(※1)
複雑型・要注意サイン(ひとつでも当てはまる場合は要検討)
- !けいれんに左右差がある
- !15分以上続いた
- !24時間以内に複数回けいれんを起こしている
- !意識の戻りが悪い
- !発達の遅れや神経学的異常がある
- !生後6か月未満、または6歳以降のけいれん
- !けいれん当時に発熱がなかった
- !発熱を伴わないけいれんの既往がある
- !てんかんや神経疾患が疑われる
ひとつでも当てはまる場合は複雑型熱性けいれん、または熱性けいれん以外の疾患も考慮が必要です。当院では千葉県こども病院など小児神経専門医のいる医療機関への紹介を検討しています。(※1)
院長より:鑑別で迷ったときの判断軸
「単純型か複雑型か迷う」というケースは実際に起こります。私が判断に迷うとき最も重視しているのは「意識の戻り方」と「左右差の有無」です。この2点が曖昧なまま帰宅させることは避けます。
また、ダイアップ使用後に来院した場合、薬剤の影響で意識が戻りにくく見えることがある点を念頭に置いて評価するようにしています。判断に迷ったときは紹介、というスタンスで向き合うことも大切です。
STEP 2|ダイアップ坐剤の使い方と保護者への説明
単純型として帰宅可能と判断した場合、次に検討するのがダイアップ坐剤(ジアゼパム)の処方です。ここは「処方するかどうか」の判断だけでなく、保護者にどう説明するかが診療の質を分けるポイントです。
ダイアップのメリット
- 熱性けいれんの再発予防に有効(※1、※2)
- 保護者の不安を軽減し、安心して帰宅してもらえる
- 「次にけいれんが起きたときの備え」として機能する
ダイアップのデメリット・注意点
- 目的は再発予防のみ。てんかん予防・発達改善効果はない(※1、※2)
- 使用後にけいれんが起きた場合、薬剤による意識朦朧と複雑型の区別が難しくなる(※1、※3)
- 鎮静効果で診察・評価が難しくなることがある
院長より:私の処方スタンス
私はメリット・デメリットを丁寧に説明した上で、保護者の方と相談しながら処方を決めています。実際には、目の前でお子さんがけいれんを起こした体験のショックが非常に大きいため、説明後はほとんどの方が処方を希望されます。「お守りとして持っておきたい」というご家族の気持ちは十分に理解できますし、安心して帰宅していただくことも私たちの大切な役割だと考えています。
ダイアップ坐剤 処方例
| 体重の目安 | 使用規格 | 用量の根拠 |
|---|---|---|
| 〜10kg未満 | 4mg | ジアゼパムとして 1回0.4〜0.5mg/kg 1日量1mg/kgを超えないこと(※3) |
| 10〜15kg未満 | 6mg | |
| 15kg以上 | 10mg |
- 発熱時、37.5℃以上を目安に1回1個を肛門内に挿入
- 初回使用後、8時間後も発熱が続く場合は2回目を使用可
- 原則として自己判断で3回目は使用しないよう説明
STEP 3|帰宅時に必ず伝える「けいれん時の対応手順」
帰宅後に再びけいれんが起きたとき、保護者が正しく対応できるかどうかが子どもの安全を左右します。「説明した」ではなく「正しく伝わった」状態で帰っていただくことを意識してください。
保護者への帰宅時説明リスト
- 1けいれんが起きたら、まず時間を計る
- 2横向きに寝かせて、口の中に物を入れない
- 3水や薬を飲ませない
- 4体を押さえつけない
- 5可能であれば動画を撮影する(後の診察に役立つ)
- !5分以上続く場合は救急要請を検討する
- !左右差がある・繰り返す・意識が戻らない・呼吸状態が悪い場合も救急要請または救急受診を検討する
院長より:「伝わる説明」にするための一工夫
保護者の方は、けいれんを目の当たりにしたショックで頭が真っ白になっている状態で来院されることが多いです。どれだけ丁寧に説明しても、その場では半分しか頭に入っていないことを前提にしてください。
私が意識しているのは以下の3点です。
- 「今回は大丈夫でしたよ」と最初に安心感を伝えてから、詳しい説明に入る
- 「5分以上続いたら救急を呼んでください」など、数字を使って具体的に伝える
- 説明したことを紙に書いて渡すか、院内の説明プリントを活用する
「先生に説明してもらって、少し安心しました」という言葉をいただけたとき、診療の本質的な役割を果たせたと感じます。
まとめ|熱性けいれん外来対応の3ステップ
| STEP | やること | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 1 | 単純型 / 複雑型の鑑別 | 左右差・持続時間・繰り返し・意識回復を確認 |
| 2 | 帰宅 or 紹介の判断 | 複雑型・判断に迷う場合は小児神経専門医へ紹介 |
| 3 | 帰宅時の説明 + ダイアップ検討 | メリット・デメリットを伝え、保護者と相談して処方を決める |
熱性けいれんは医学的には良性の疾患です。しかし、保護者にとっては「子どもが死ぬかもしれない」と感じるほどの恐怖体験であることを忘れないでください。正確な鑑別と、安心して帰宅してもらうための説明——この両輪が、かかりつけ医としての熱性けいれん診療の本質だと考えています。
当院で研修している先生方にも、ぜひこの視点を持って外来に臨んでいただければと思います。
こういった外来診療の機微を、現場で一緒に学びませんか
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教科書には書かれていない「診療の機微」「保護者説明のコツ」「紹介判断の感覚」を、実際の外来の中で磨けます。
週1回からの参加OK。体験勤務は時給10,000円+交通費支給。
最後までご覧いただきありがとうございました。引き続き、若手医師の先生のお役に立てる情報を発信していきます。
あまが台ファミリークリニック 院長 細田俊樹
参考文献
- ※1 日本小児神経学会 監修、熱性けいれん診療ガイドライン改訂ワーキンググループ 編集.熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023.診断と治療社,2023.
- ※2 Offringa M, Newton R, Nevitt SJ, Vraka K. Prophylactic drug management for febrile seizures in children. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2021;6:CD003031.
- ※3 ダイアップ坐剤4mg・6mg・10mg 添付文書.高田製薬株式会社.