糖尿病

インスリン治療中でもCペプチドインデックスは測れる?休薬の要否と解釈の注意点を医師が解説

インスリン治療中の患者さんで、膵β細胞の余力を評価したいと思ったとき、こんな疑問を持ったことはないでしょうか。

「持効型インスリンを使っていると、Cペプチドインデックスは正確に評価できないのでは?」

「いったんインスリンを中止してから測るべきなのか?」

「外来でそのまま採血してよいのか、それとも解釈に落とし穴があるのか?」

若手の先生ほど、ここで迷いやすいと思います。特に、糖毒性が強かった患者さんがインスリン導入後に落ち着いてきたタイミングでは、今後の治療方針を考えるうえで“自前の分泌能がどこまで残っているか”を把握したくなる場面が少なくありません。

インスリン治療中でもCペプチドインデックスは原則評価可能です

皆さん、こんにちは。あまが台ファミリークリニック院長の細田です。

私は地域医療の最前線で25年診療を続けてきた家庭医療専門医です。日々の外来では、糖尿病を含む慢性疾患の初期評価から治療継続、薬剤調整まで幅広く対応しています。開業前研修の先生方からも、外来で実際にぶつかる疑問をよく受けますが、今回のテーマはその中でも非常に実践的な内容です。

結論からいうと、持効型インスリンなどを使用している患者さんでも、通常はインスリンを中止せずにCペプチドインデックス(CPI)を評価できます。外から注射したインスリンにはCペプチドが含まれていないため、測定されたCペプチドは基本的に患者さん自身の内因性インスリン分泌を反映するからです(※1、※2)。

そもそもCペプチドインデックスとは何か

Cペプチドインデックスは、空腹時Cペプチドと空腹時血糖を組み合わせて、膵β細胞の分泌余力をみるための実臨床で使いやすい指標です。一般に、以下の式で算出されます(※3)。

CPI = 空腹時Cペプチド(ng/mL)÷ 空腹時血糖(mg/dL)× 100

単にCペプチドの絶対値だけを見るよりも、その時点の血糖値に対してどの程度インスリンが分泌されているかを評価できるため、外来での意思決定に役立ちます。特に、今後インスリンを減量できる余地があるか、あるいは分泌不全がかなり進んでいるかを見極めたい場面で有用です(※3、※4)。

なぜインスリンを中止しなくても評価できるのか

理由1 注射したインスリンにはCペプチドが含まれていないから

インスリンは体内でプロインスリンから切り出される際に、インスリンとCペプチドが等モルで分泌されます。一方、治療で用いる外因性インスリン製剤にはCペプチドは含まれていません。そのため、採血で測定されるCペプチドは、基本的には患者さん自身の膵β細胞から出てきたものです(※1、※2)。

この点が、血中インスリン値そのものよりCペプチドの方が「内因性分泌の評価」に向いている大きな理由です。血中インスリン値は外から打ったインスリンの影響を受けますが、Cペプチドは受けません(※1、※2)。

理由2 CPIは“その時の血糖に対する分泌”を見る指標だから

持効型インスリンを使っていると血糖が下がり、それに伴って自前のインスリン分泌もある程度落ち着きます。ここだけ切り取ると、「では治療中は本来の分泌能を低く見積もってしまうのでは」と感じるかもしれません。

ただ、CPIはCペプチド単独ではなく、同時点の血糖値との比で評価する指標です。したがって、安定した空腹時条件で測定されていれば、治療中であっても“その血糖レベルに対してどれくらい内因性分泌があるか”を把握することができます(※3、※4)。

つまり、臨床的には「インスリン治療中だからCPIは使えない」と考える必要はありません。むしろ、休薬によって高血糖や代謝悪化を招く方が現実的にはデメリットが大きく、通常外来では現行治療のまま評価する方が実用的です。

ただし、そのまま鵜呑みにしてはいけない2つの場面があります

1 低血糖で採血している場面

最も注意したいのは、採血時に低血糖になっているケースです。低血糖時には、生理的に膵β細胞からのインスリン分泌が強く抑制されるため、Cペプチドも低く出やすくなります(※2、※5)。

このため、たまたま採血時の血糖がかなり低い状態であれば、本当は分泌能がまだ残っていても、CPIが過小評価される可能性があります。外来では「朝の食事量が少なかった」「前夜の基礎インスリンがやや効きすぎた」「SU薬やグリニドを併用していた」など、日常的に起こりうる状況です。

ここで大事なのは、“低いCPIを見た瞬間に膵疲弊と断定しない”ことです。まずは同時血糖を確認し、低血糖あるいはそれに近い条件で採血されていないかを見直すべきです。解釈に迷う場合は、別日に安定した空腹時血糖で再評価した方が安全です。

2 腎機能が低下している場面

Cペプチドは主として腎でクリアランスされるため、腎機能低下例では血中Cペプチドが高めに出やすくなります(※1、※2、※6)。その結果、CPIが実際より高く見え、「まだ膵臓に余力がある」と過大評価してしまうことがあります。

特に高齢の2型糖尿病患者さんでは、eGFR低下を伴っていることが珍しくありません。こうした症例では、CPIだけを独立して見るのではなく、eGFR、治療内容、体重変化、低血糖の有無、食後血糖やHbA1cの推移も合わせて総合的に判断する必要があります。

若手の先生が外来で迷いやすいポイント

ここで、よくある反論をあえて取り上げます。

「でも、インスリンで血糖が下がっているなら、本来の膵β細胞機能をきれいには評価できないのでは?」

その感覚はもっともです。実際、CPIは“治療介入のない純粋な自然状態の膵機能”を取り出す検査ではありません。しかし、私たちが外来で本当に知りたいのは、厳密な研究条件下のβ細胞機能ではなく、“いまの治療下で、この患者さんにどの程度の内因性分泌余力が残っているか”です。

その意味で、CPIは非常に実践的です。外因性インスリンの影響を直接受けずに内因性分泌を見られること、空腹時採血で簡便に行えること、そして血糖値との比で読めることから、日常診療で治療方針を決める材料として十分有用です(※1、※3、※4)。

実臨床ではどう使うか

私が研修中の先生にお伝えしたいのは、CPIを「単発の数字」ではなく、「治療方針を考えるための文脈のある指標」として使うことです。

  • 空腹時で採血されているか
  • 採血時に低血糖ではないか
  • 腎機能低下がないか
  • 高度高血糖から改善した直後ではないか
  • 実際の血糖推移やHbA1cと矛盾していないか

このあたりを押さえておけば、インスリン治療中の患者さんでも、CPIは十分に臨床的価値のある情報になります。逆に、この前提を飛ばして数字だけを見ると、過小評価や過大評価につながります。

まとめ

持効型インスリンなどのインスリン注射を使用している患者さんでも、原則としてインスリンを中止せずにCペプチドインデックスを評価できます。なぜなら、外因性インスリンにはCペプチドが含まれず、測定値は内因性インスリン分泌を反映するからです(※1、※2)。

ただし、低血糖時にはCペプチドが抑制されて過小評価されうること、腎機能低下時には過大評価されうること、この2点は必ず意識してください(※2、※5、※6)。

若手の先生にとっては、「インスリン中だから測れない」と覚えるよりも、「休薬なしで測ってよい。ただし同時血糖と腎機能を必ず見る」と整理しておく方が、外来で圧倒的に使いやすいと思います。

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参考文献

  • ※1 Leighton E, et al. A Practical Review of C-Peptide Testing in Diabetes. Diabetes Ther. 2017;8(3):475-487.
  • ※2 Jones AG, Hattersley AT. The clinical utility of C-peptide measurement in the care of patients with diabetes. Diabet Med. 2013;30(7):803-817.
  • ※3 Funakoshi S, et al. Utility of indices using C-peptide levels for indication of insulin therapy to achieve good glycemic control in Japanese patients with type 2 diabetes. J Diabetes Investig. 2011;2(4):297-303.
  • ※4 Saisho Y. Postprandial serum C-peptide to plasma glucose ratio as a marker of β cell function: implication for the management of type 2 diabetes. Int J Mol Sci. 2016;17(5):744.
  • ※5 Vinay ES, et al. C-peptide in Precision Diabetes Care and Beyond. 2026. 同時血糖の確認が低血糖による分泌抑制の除外に重要であることを解説。
  • ※6 Maddaloni E, et al. C-peptide determination in the diagnosis of type of diabetes and its management: A clinical perspective. Diabetes Obes Metab. 2022;24(10):1909-1922.
この記事の監修者
細田 俊樹
  • 医療法人社団緑晴会 あまが台ファミリークリニック 理事長
  • 日本プライマリ・ケア連合学会 家庭医療専門医
  • 日本糖尿病学会正会員、日本睡眠学会所属、日本肥満学会所属

年間15,000人以上の患者さんを診察している総合診療専門医。
総合診療という専門分野を生かし、内科、皮膚科、小児科、生活習慣病まで様々な病気や疾患に対応している。
YouTubeでよくある病気や患者さんの疑問に対して解説している