CKD3b期は“分かれ道”
― 腎機能は「今の数値」より「下がるスピード」を見る ―

こんにちは。
医療法人社団 緑晴会 あまが台ファミリークリニック 院長の細田俊樹です。
私はプライマリ・ケア(総合診療)を専門に、医師として25年目になります。
年間5000人以上の糖尿病の患者さんを診察しています。
(日本糖尿病学会正会員、日本プライマリケア連合学会 家庭医療専門医)
腎機能評価において、
私たちはつい「eGFRがいくつか」という“今の数字”に目が行きがちです。
しかし
将来透析になるかどうかを本当に左右するのは、
腎機能がどのくらいのスピードで低下しているか
であることが、近年のデータから明確になってきました。(※1)
今回は、
日本糖尿病学会誌 2025年掲載論文
〔糖尿病 68(11):409~417,2025〕をもとに、
日常診療・栄養指導に直結する重要ポイントを整理します。
目次
腎臓は「悪さの程度」より「悪くなる速さ」が将来を決める
本論文で示された最も重要なメッセージは、次の一点に集約されます。
「腎臓の数値がどのくらい悪いか」よりも、
「どのくらいのスピードで腎機能が低下しているか」が、
将来の透析リスクを強く規定する。
(※1)
これは感覚的な話ではなく、
5年以内の透析導入率という明確なアウトカムで示されています。(※1)

CKD3b期(eGFR 30〜44)は“分かれ道”の時期
特に重要なのが CKD3b期(eGFR 30〜44) です。(※1)
この時期の患者さんは、
- 自覚症状がほとんどない
- 日常生活も大きく変わらない
ということが多く、
一見すると切迫感に乏しい段階です。
しかしCKD3b期は、
将来、透析に進むか・進まないかが大きく分かれる時期
であることが、この論文から明確に示されています。(※1)
eGFR低下スピードで、未来は桁違いに変わる
論文では、CKD3b期に入った患者さんを
- eGFRが1年で5以上低下する群
- それ未満の低下にとどまる群
に分けて解析しています。(※1)
- 腎機能がゆっくり悪化する人 → 5年以内の透析導入率 約7%
- 腎機能が急速に悪化する人 → 5年以内の透析導入率 約60%
同じCKD3b期であっても、
腎機能低下のスピードによって、将来はまったく異なる
ことがわかります。(※1)
尿アルブミンが少なくても安心できない
尿蛋白や尿アルブミンが軽度、あるいは陰性であっても、
eGFR低下が速い患者は透析リスクが高い
(※1)
つまり、
- 尿蛋白が少ない
- 血糖コントロールも極端に悪くない
- 血圧も一見コントロールされている
こうした条件がそろっていても、
eGFRが年単位で大きく下がっている患者は、将来ハイリスク
ということになります。(※1)
私の考え:腎臓は「単発の数字」では評価しない
腎機能評価で最も重要なのは、
単発のeGFRを見ることではありません。
- 過去1〜数年分のeGFRを並べて確認する
- 1年あたり、どれくらい低下しているかを見る
医療者側が検査データで判断すべき領域です。
CKD3b期で特に注意して見てほしい患者像
- eGFRが30〜44に入っている
- eGFRが年単位で大きく下がっている可能性がある
- 尿アルブミンが少なくてもeGFRが低下し続けている
- 高血圧がある、または降圧薬を使用している
- 心不全、心筋梗塞、脳梗塞などの既往がある
- 高齢で、体重や食事量が不安定
「CKD3b期 × 低下スピード」
ここが最重要の組み合わせです。
この論文をどう臨床に生かすか
この論文は、
透析導入を勧めるための論文ではありません。
「誰に、いつ、本気で介入すべきか」
を見極めるための論文
だと考えています。
この段階での介入は、
将来の透析を防ぐ医療そのもの
と言ってよいと思います。
この視点を現場で学びたい若手医師の方へ
CKD3b期を「まだ様子見」ではなく、“将来が分かれる分岐点”として捉える。
この視点は腎臓内科志望に限らず、総合診療・プライマリケアに必須の臨床思考だと考えています。
当院では、eGFRを単発で見るのではなく、経時変化(下がるスピード)から予後を逆算する診療を日常の型として共有しています。
「数値を覚える」より、「患者さんの5年後を想像して今の一手を決める」力を伸ばしたい方は、ぜひ見学・研修をご検討ください。
若手医師・研修医・専攻医の方へ
当院では、CKDや糖尿病をはじめとした慢性疾患を、
「今の数値」ではなく「将来の経過」から考える診療を、日常の臨床で実践しています。
総合診療・プライマリケアを軸に、
開業前に身につけておきたい診療の考え方・組み立て方を、
現場で一緒に学びたい方は、まずは見学からご相談ください。
参考文献
- 日本糖尿病学会誌:糖尿病 68(11):409~417,2025.




