クリニック経営

クリニック経営は何から学ぶべきか|若手医師が開業前に知るべき現実

クリニック経営

「将来は開業したい。でも、クリニック経営は何から学べばいいのだろう」

勤務医として診療経験を積んでいる先生の中には、このように感じている方も多いのではないでしょうか。

診療にはある程度自信がある。患者さんを診ることも好き。地域医療にも関心がある。けれども、いざ開業を考え始めると、診療以外のことが急に増えてきます。

物件選び、資金計画、電子カルテ、採用、スタッフ教育、集患、ホームページ、口コミ、診療報酬、労務管理、院内ルールづくり。

勤務医時代には意識しなくてもよかったことが、開業医になるとすべて院長の判断になります。

私は、千葉県長生郡長生村で「あまが台ファミリークリニック」を開業し、地域のかかりつけ医として日々診療を行いながら、クリニック経営、集患、採用、スタッフ教育、組織づくりに向き合ってきました。

この記事では、これから開業を考えている若手医師の先生に向けて、「クリニック経営は何から学ぶべきか」について、実際にクリニックを運営している立場からお伝えします。

この記事を書いた医師

あまが台ファミリークリニック 院長 細田俊樹

医師歴25年、家庭医療専門医として地域医療の最前線で診療を行っています。2019年9月に千葉県長生郡長生村で、内科・小児科・皮膚科・糖尿病内科を標榜する「あまが台ファミリークリニック」を開業しました。

現在は年間15,000人以上の患者さんを診療しながら、外来診療、クリニック経営、Web集患、スタッフ採用、教育、組織づくりに取り組んでいます。これから開業を考える若手医師の先生に向けて、机上の理論だけではなく、実際のクリニック運営で得た経験をもとにお伝えします。

この記事では、これから開業を考えている若手医師の先生に向けて、「クリニック経営は何から学ぶべきか」について、実際にクリニックを運営している立場からお伝えします。

この記事でわかること

  • 若手医師が開業前に感じやすい経営不安
  • クリニック経営が診療力だけでは成立しない理由
  • 開業前に学ぶべき5つの経営要素
  • 机上の勉強だけでは身につきにくい現場感覚
  • 開業前研修や1日見学で確認すべきポイント

若手医師が「クリニック経営」で検索する理由

若手医師の先生が「クリニック経営」と検索するとき、単に経営用語を知りたいわけではないと思います。

本当に知りたいのは、もっと切実なことではないでしょうか。

  • 自分は開業して本当にやっていけるのか
  • 診療以外に何を準備すればよいのか
  • スタッフ採用で失敗しないためには何が必要か
  • 患者さんはどうやって来てくれるのか
  • 開業後にお金が回らなくなるリスクはないのか
  • 自分が院長として組織をまとめられるのか

つまり、「クリニック経営」という言葉の奥には、開業への期待と同時に、不安があります。

勤務医として病院で働いている間は、診療に集中しやすい環境があります。外来の予約システム、会計、採用、給与計算、広告、ホームページ、クレーム対応、設備管理などは、病院という組織が担ってくれます。

しかし、開業するとこれらの多くが院長の責任になります。

だからこそ、開業前の段階で「クリニック経営」を学んでおくことには大きな意味があります。

クリニック経営は診療力だけでは成立しない

医師にとって、診療力は最も大切な土台です。

患者さんを適切に診断し、治療し、必要なときには専門医療機関へ紹介する。地域のかかりつけ医として、幅広い相談に対応する。この力がなければ、クリニックとして信頼を得ることはできません。

ただし、診療力だけでクリニック経営が成立するわけではありません。

どれだけ診療力があっても、患者さんに存在を知ってもらえなければ来院につながりません。

どれだけ院長が優秀でも、スタッフが定着しなければ診療体制は安定しません。

どれだけ患者さんが増えても、診療導線や予約管理が整っていなければ、待ち時間が長くなり、患者満足度が下がります。

どれだけ理念が立派でも、日々の朝礼や面談、教育の中で伝え続けなければ、スタッフの行動には落とし込まれません。

つまり、クリニック経営とは、診療力を中心にしながら、集患、採用、教育、組織づくり、数字管理、院長の判断を組み合わせていく仕事です。

開業前に知っておきたい視点

開業は「自分の診療を自由にできるようになること」だけではありません。同時に、「診療以外の責任を自分で引き受けること」でもあります。この現実を開業前に知っておくことが、失敗リスクを下げる第一歩です。

開業前に学ぶべき5つの経営要素

では、若手医師が開業前にクリニック経営を学ぶなら、何から始めればよいのでしょうか。

私は、少なくとも次の5つは開業前に学んでおいた方がよいと考えています。

  • 外来診療力
  • 集患力
  • スタッフ採用力
  • 教育と組織づくり
  • 院長の判断力

それぞれについて、順番に解説します。

1. 外来診療力

クリニック経営の中心は、やはり外来診療です。

特に内科系クリニック、総合診療クリニック、家庭医療クリニックを目指す先生にとっては、幅広い主訴に対応する力が重要になります。

発熱、咳、腹痛、頭痛、めまい、皮疹、小児の体調不良、生活習慣病、睡眠時無呼吸、肥満、アレルギー、予防接種、健康診断。

地域のクリニックでは、患者さんは診療科を明確に分けて相談に来るわけではありません。

「何科に行けばよいかわからない」

「まず先生に相談したい」

そういう患者さんが来院します。

そのため、開業前には、自分がどこまで診るのか、どこから紹介するのか、どの疾患をクリニックの強みにするのかを整理しておく必要があります。

外来診療力は経営にも直結する

外来診療力は、単に医学的な力だけではありません。

患者さんの不安を短時間で把握する力、わかりやすく説明する力、再診につなげる力、必要な検査や治療を提案する力も含まれます。

患者さんが「ここに相談してよかった」と感じれば、再診や家族紹介につながります。

逆に、説明がわかりにくい、対応が冷たい、診療の流れが不安定だと、患者さんは離れていきます。

クリニック経営において、外来診療力は最も重要な集患力でもあります。

2. 集患力開業前の若手医師が見落としやすいのが、集患です。

「良い医療をしていれば、患者さんは自然に来てくれる」

そう考えたくなる気持ちはよくわかります。

しかし、現実には、患者さんはクリニックを選ぶ前に検索します。

「近くの内科」

「糖尿病 クリニック」

「睡眠時無呼吸 外来」

「小児科 予約」

「皮膚科 かゆみ」

このように、症状、病名、地域名、診療科名を組み合わせて探します。

つまり、クリニック経営では、患者さんが困ったときに見つけてもらえる状態を作ることが必要です。

開業前に現場を見てみたい先生へ

クリニック経営は、実際の外来と院内運営を見ると理解が深まります

集患、採用、スタッフ教育、朝礼、診療導線、院長の判断は、本や動画だけでは具体的にイメージしにくい部分です。当院では、開業を考える若手医師の先生に向けて、外来診療とクリニック経営の現場を見学できる機会を設けています。

いきなり研修に申し込む必要はありません。まずは1日見学を通して、「自分が開業するとしたら何を学ぶべきか」を具体的に確認していただけます。

開業前研修・1日見学について見る

集患は広告ではなく、患者さんへの情報提供

集患という言葉に抵抗がある先生もいるかもしれません。

「医療で集患と言うのは、少し商売っぽくて苦手だ」と感じる先生もいると思います。

ただ、私は集患を単なる広告とは考えていません。

患者さんが困っていることに対して、正確でわかりやすい情報を届けること。

そして、その症状や疾患で困ったときに、どこに相談すればよいのかを示すこと。

これも地域医療の一部だと考えています。

たとえば、糖尿病、高血圧、睡眠時無呼吸、肥満症、アレルギー、皮膚疾患などは、患者さん自身が「この程度で受診していいのか」と迷うことがよくあります。

そこで、ブログやホームページで丁寧に情報発信しておくことで、患者さんが受診するきっかけになります。

開業前に現場で確認してみたい先生へ

クリニック経営、集患、スタッフ採用、組織づくりは、本や動画だけでは具体的なイメージが湧きにくい部分です。当院では、開業を考える医師向けに、実際の外来診療や院内運営を見学できる開業前研修・1日見学を行っています。詳しくは、記事の最後にご案内します。

Web集患とは?SEOやYouTubeなの発信力

3. スタッフ採用力

クリニック経営で、院長が大きく悩みやすいのがスタッフ採用です。

開業前は、物件、内装、医療機器、電子カルテ、資金調達などに意識が向きやすいと思います。

しかし、開業後に日々の診療を支えるのはスタッフです。

受付、医療事務、看護師、管理栄養士、臨床検査技師、クリーンスタッフなど、それぞれの職種が連携して初めて、クリニックの診療は回ります。

院長一人で患者さんを診ているように見えても、実際にはチームで医療を提供しています。

採用は人数合わせではない

採用で大切なのは、単に人を集めることではありません。

どんな人に来てほしいのか。

どんな価値観の人と働きたいのか。

どんな人は自院に合わないのか。

ここを明確にしておく必要があります。

条件だけを前面に出した求人では、条件だけで比較されやすくなります。

もちろん給与や休日は大切です。しかし、それだけで入職した場合、理念や働き方が合わなければ早期離職につながる可能性があります。

だからこそ、クリニックの理念、診療方針、スタッフに求める姿勢、教育体制、院内の雰囲気を求人ページで丁寧に伝えることが大切です。

4. 教育と組織づくり

良いスタッフを採用できれば、それでクリニック経営が安定するわけではありません。

採用はゴールではなく、スタートです。

どれだけ人柄の良いスタッフを採用しても、院長の考えが伝わっていなければ、少しずつ方向がずれていきます。

患者さんにどう接してほしいのか。

忙しいときに何を優先してほしいのか。

電話対応では何を大切にするのか。

診療補助ではどこまで確認してほしいのか。

ミスが起きたときに、どのように共有し、改善するのか。

これらを仕組みとして伝え続ける必要があります。

朝礼は外来前の地図合わせ

当院では、朝礼の時間を大切にしています。

朝礼は、単なる連絡事項の共有ではありません。

その日の診療体制、予約状況、検査予定、注意が必要な患者さんの情報を共有し、スタッフ全員が同じ方向を向くための時間です。

私は、朝礼は外来が始まる前に、みんなで地図を広げるような時間だと考えています。

今日はどこが混みそうか。

どの時間帯に検査が重なるのか。

どの患者さんに注意が必要か。

どのように声をかけ合うか。

朝の段階でこれを確認しておくことで、外来が始まってからの動きがそろいやすくなります。

理念は忙しい外来で迷わないための北極星

クリニックの現場は、どうしても目の前の業務に追われます。

受付、会計、電話、採血、検査、診療補助、患者案内。

一つひとつは大切な業務ですが、忙しさの中で「なぜこの仕事をしているのか」が見えにくくなることがあります。

だからこそ、理念やミッションを繰り返し共有することが大切です。

理念は、忙しい外来で迷わないための北極星のようなものです。

患者さんに安心してもらう。

不安を少しでも減らす。

地域の方に信頼してもらう。

スタッフ同士も支え合う。

この方向性を日々確認することで、クリニックの文化が少しずつ作られていきます。

月1回の勉強会で深く学ぶ

日々の朝礼だけでは扱いきれないテーマもあります。

そのため、当院では月1回、土曜日午後に勉強会を行っています。

外部講師を招くこともありますし、接遇や診療報酬、患者対応、スタッフ自身の発表などを行うこともあります。

大切なのは、院長が一方的に話すだけではなく、スタッフ自身が学び、考え、言葉にする機会を持つことです。

スタッフが育つクリニックは、患者さんにも伝わります。

患者さんは、医師の診察だけでクリニックを評価しているわけではありません。

受付での一言、看護師の声かけ、採血前の説明、会計時の対応、電話対応、待合室の雰囲気。

そういった全体を見ています。

だから、スタッフ教育と組織づくりは、クリニック経営の重要な柱です。

5. 院長の判断力

開業医になると、最終的な判断は院長に集まります。

予約枠をどうするか。

発熱患者さんをどこまで受けるか。

スタッフを増やすか。

診療時間を変更するか。

新しい治療を導入するか。

広告費をかけるか。

クレームにどう対応するか。

採用候補者を採用するか見送るか。

こうした判断の連続が、クリニック経営です。

勤務医時代は、判断に迷ったときに上司や病院の方針に従うことができます。

しかし、開業後は院長自身が方針を決める場面が増えます。

院長の判断基準を持つ

判断力を高めるために大切なのは、自分の判断基準を持つことです。

  • 患者さんの安全につながるか
  • スタッフが無理なく続けられるか
  • クリニックの理念に合っているか
  • 経営的に継続可能か
  • 地域医療にとって意味があるか

このような基準がないと、その場の感情や忙しさに流されやすくなります。

逆に、判断基準が明確であれば、迷ったときにも戻る場所ができます。

開業前に、院長としてどのようなクリニックを作りたいのかを言語化しておくことは、とても重要です。

クリニック経営は現場で学ぶと理解が深まる

クリニック経営について、本や動画、セミナーで学ぶことは大切です。

資金計画、診療報酬、マーケティング、採用、労務管理など、知識として事前に学べることはたくさんあります。

しかし、現場でしかわかりにくいこともあります。

  • 朝礼でどのように情報共有しているのか
  • 医師、看護師、事務がどのように連携しているのか
  • 混雑時にどのように声をかけ合っているのか
  • 患者さんの流れをどう作っているのか
  • 院長がスタッフにどのように伝えているのか
  • 診療と経営のバランスをどう取っているのか

こうしたことは、文章だけではなかなか伝わりません。

実際に現場を見ることで、「自分が開業したら、ここを真似したい」「ここは自分のスタイルに合わせて変えたい」と具体的に考えられるようになります。

開業前研修で見るべきポイント

もし開業前研修やクリニック見学に参加するなら、単に外来診療だけを見るのではなく、次のような点も確認するとよいと思います。

  • 院長が朝礼で何を話しているか
  • スタッフ同士の雰囲気はどうか
  • 患者さんの導線はスムーズか
  • 受付、看護師、医師の連携はどうか
  • ホームページやブログと実際の診療内容が一致しているか
  • 院長がどのような基準で判断しているか
  • スタッフ教育が仕組みになっているか

開業前にこうした現場感覚を持っておくと、開業後に起きる問題を想像しやすくなります。

そして、想像できる問題は、事前に準備できます。

まとめ|クリニック経営は開業前から学べる

クリニック経営は、開業してから初めて学ぶものではありません。

むしろ、開業前から学んでおくことで、開業後の不安や失敗リスクを減らすことができます。

若手医師の先生が開業前に学ぶべきことは、診療だけではありません。

  • 外来診療力
  • 集患力
  • スタッフ採用力
  • 教育と組織づくり
  • 院長の判断力

この5つをバランスよく学ぶことが、安定したクリニック経営につながります。

もちろん、最初からすべてを完璧にできる必要はありません。

私自身も、開業してから学んだこと、反省したこと、もっと早く知っておきたかったことがたくさんあります。

だからこそ、これから開業を考える先生には、開業前の段階でできるだけ現場を見て、具体的に学んでほしいと思っています。

開業前に、クリニック経営の現場を見てみませんか?

あまが台ファミリークリニックでは、開業を目指す医師向けに、外来診療、集患、スタッフ採用、教育、組織づくりを現場で学べる開業前研修・1日見学を行っています。

いきなり研修に申し込む必要はありません。まずは実際の診療や朝礼、スタッフとの連携を見て、自分に合うかどうかを確認していただければと思います。

開業前研修・1日見学の詳細を見る

この記事の監修者
細田 俊樹
  • 医療法人社団緑晴会 あまが台ファミリークリニック 理事長
  • 日本プライマリ・ケア連合学会 家庭医療専門医
  • 日本糖尿病学会正会員、日本睡眠学会所属、日本肥満学会所属

年間15,000人以上の患者さんを診察している総合診療専門医。
総合診療という専門分野を生かし、内科、皮膚科、小児科、生活習慣病まで様々な病気や疾患に対応している。
YouTubeでよくある病気や患者さんの疑問に対して解説している