2025年8月、日本高血圧学会は約6年ぶりとなる改訂版「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」を発表しました。
今回の改訂における最大の変更点は、年齢や合併症の有無にかかわらず、降圧目標が診察室血圧130/80mmHg未満に原則として一本化されたことです。※1
皆さん こんにちは。あまが台ファミリークリニック院長の細田です。
医師歴25年、家庭医療専門医として年間12000人の患者さんを診察しています。
今回は、JSH2025で改定された血圧の目標値と外来での注意点について解説します。

目次
なぜ今、高血圧ガイドラインは「130/80mmHg」へ一本化したのか?
一律化の裏にある「科学的根拠」と「管理の簡素化」
以前のJSH2019では、75歳以上の高齢者や脳血管障害患者には140/90mmHg未満を目標とするなど、基準が細分化されていました。
しかし、近年の大規模なメタ解析により、140mmHgを下回る「高値血圧(130〜139/80〜89mmHg)」の段階であっても、心血管疾患の発症リスクが有意に上昇することが明らかになっています。※1
JSH2025では「まずは130/80未満を目指す」というシンプルな目標に一本化されました。 
これは、日本国内に約4,300万人いるとされる高血圧患者のうち、良好にコントロールされているのがわずか27%程度という現状を打破するための戦略的な変更でもあります。※1
実臨床の主役は「家庭血圧」。診察室での一喜一憂は卒業しよう
若手医師の先生方に実臨床で最も意識していただきたいのは、「診察室血圧はあくまで参考値であり、真の主役は家庭血圧である」ということです。
JSH2025では、ガイドラインの名称自体が「治療」から「管理・治療」へと変更され、日常生活における血圧管理がより重視されています。※1
なぜ「家庭血圧 125/75mmHg未満」が重要なのか
診察室で緊張して血圧が上がる「白衣高血圧」や、逆に診察室では正常なのに自宅で高い「仮面高血圧」を正しく評価するには、家庭血圧の測定が不可欠です。
将来の心血管イベントを予測する精度は、診察室血圧よりも家庭血圧の方が高いことが示されています。※1
- 診察室血圧目標: 130/80mmHg未満
- 家庭血圧目標: 125/75mmHg未満
当院では、患者さんに血圧手帳だけでなく、スマートフォンアプリによるデジタル管理も推奨しています。

JSH2025でも新たに推奨項目となったデジタルツールの活用は、医師とのデータ共有を容易にし、共同意思決定(SDM)を促進する強力な武器となります。※1, ※5
「一律130/80」に対する懸念:若手医師が陥りやすい罠
ここで、目の前の患者さんと真摯に向き合う熱心な先生ほど、以下のような疑問を抱くのではないでしょうか。
「高齢者や虚弱な患者さんにまで一律に130/80を適用するのは、ふらつきによる転倒や、過度な降圧による腎機能悪化を招くリスクがあるのではないか?」
「個別化」という補完戦略
その懸念は非常に真っ当です。
実際に、フレイル(虚弱)が進行した要介護高齢者やエンド・オブ・ライフの段階にある患者に対して、数値達成のみを優先した厳格な降圧を強いることは過剰医療となるリスクがあります。※2
そのため、JSH2025では「原則統一」を掲げつつ、以下のカテゴリー分類に基づいた個別対応を求めています。※2
| カテゴリー | 対象状態 | 降圧目標(収縮期) | 備考 |
|---|---|---|---|
| カテゴリー1 | 健常〜フレイル (自立して通院可能) |
130mmHg未満 | 原則通り |
| カテゴリー2 | フレイル〜要介護(軽度) (通院に介助が必要) |
140mmHg未満 | 合併症等により130未満も考慮 |
| カテゴリー3 | 要介護状態 (通院困難・自立困難) |
150mmHg未満 | 120未満への過降圧は避ける |
| カテゴリー4 | 人生の最終段階 (予後が限定的) |
140〜160mmHg | 新規開始せず、減薬・中止を原則とする |
「数値を追う臨床」から「患者のQOLを守る管理」へ。
このバランス感覚を身につけることこそが、大学病院では経験しにくい、地域医療・家庭医療研修の醍醐味と言えます。
あまが台ファミリークリニックで「血圧管理の先」を学ぶ
ガイドラインを理解することはスタートラインに過ぎません。地域に選ばれるクリニックを作るためには、数値を達成するための「患者さんの行動変容」をどう引き出すかが重要です。
- HDP(妊娠高血圧症候群)既往者へのアプローチ: 産後のフォローアップが、将来の脳心血管疾患リスクを減らす鍵となります。※3
- 初期治療薬の適切な選択: Ca拮抗薬、ARB/ACE阻害薬、利尿薬、β遮断薬の各特徴を考慮した「最初の1剤」の選び方。※4
- 多職種連携による仕組み化: 管理栄養士や看護師とチームを組み、減塩指導や家庭血圧測定を仕組みとしてどう運用するか。
当院の研修では、こうしたガイドラインの「行間」にある現場のリアルを、院長の細田が直接指導します。

実際にクリニックをどのように運営し、地域住民の健康を支えているか、ぜひその目で確かめてください。
▶︎ 当院メインサイト(クリニック運営の実際)
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「ガイドラインをどう外来に落とし込むか」という視点で、日々の診療を考えておられることと思います。
しかし実は、こうした質の高い血圧管理や外来診療は、医師一人の努力だけでは決して成り立ちません。
家庭血圧の定着、減塩指導、フレイル評価、行動変容の支援──
- 看護師
- 管理栄養士
- 医療事務スタッフ
こうした多職種との強固な連携体制があってこそ、外来は安定して回ります。
そしてその体制は、偶然できたものではなく、
院長の「採用」と「組織づくり」の設計によって作られています。
私が若手医師の先生方に本当に伝えたいのは、
「ガイドラインの先」にあるこの外来が回り続ける仕組みそのものです。
その具体的な考え方や実践を、LINE限定でお伝えしています。
参考文献
※1 日本高血圧学会, 高血圧管理・治療ガイドライン2025 (JSH2025). [cite: 9, 12, 13, 33, 83]
※2 日本老年医学会・日本高血圧学会, 要介護高齢者における降圧療法の適正化に関する実践的指針. [cite: 87, 88, 92]
※3 日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会, 産婦人科診療ガイドライン 産科編 2023. [cite: 44, 55]
※4 甲斐久史, 第47回日本高血圧学会 解説資料, Medical Tribune 2025. [cite: 3, 4, 5]
※5 CureApp 高血圧管理・治療ガイドライン2025改訂メディア説明会資料 (2025/08/25). [cite: 28, 29]
