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【専門医の開業は危険】その自信が失敗を招く本当の理由|総合診療医が解説
こんにちは。医療法人社団 緑晴会 あまが台ファミリークリニック院長の細田です。
私自身はプライマリ・ケア 総合診療を専門に医師として22年目になります。
クリニックを開業して4年以上が経ちます。現在では年間延べ22,000人以上の患者さんが来院されています。
2024年3月時点で当院に勤務するドクター(非常勤)は5名で開業前研修をしている方もいます。この記事を読んでくださっている先生は、おそらくご自身の専門分野で確かな実績を積み、自信を持って「いざ、開業へ」と考えていらっしゃるのではないでしょうか。
その素晴らしい志と実力に、心から敬意を表します。
しかし、あえて厳しいことを申し上げます。
その「専門医としての自信」が、皮肉にもあなたのクリニック経営を頓挫させる最大の要因になるとしたら…信じられるでしょうか?
これは脅しではありません。多くの志ある医師が、開業後に直面する「不都合な真実」なのです。
あなたは「地域の門番」になれますか?
病院勤務とクリニック開業では、医師に求められる役割が根本的に異なります。
病院では、先生は「専門家」です。紹介されてきた患者さんの、特定領域の疾患を深く診ることが仕事です。
しかし、地域で開業するということは「地域の門番(ゲートキーパー)」になるということです。(※1)
患者さんは「内科」「循環器科」と書かれた看板を見て、風邪、腹痛、頭痛、原因不明の発疹、子どもの急な発熱、切り傷…ありとあらゆる不調を抱えてやってきます。
彼らが求めているのは「循環器の専門家」である前に、「まず、この症状を何とかしてくれる信頼できる先生」なのです。
ここで、多くの専門医出身の先生が、致命的な失敗を犯します。
「これは私の専門外なので、皮膚科に行ってください」
「お子さんのことは、小児科で診てもらってください」
一見、正しい対応に思えます。しかし、これを繰り返したクリニックの待合室が、どうなるかご存知ですか?
…誰もいなくなるのです。
患者さんは「あそこに行っても、結局よそに回されるだけ」と判断し、二度とあなたのクリニックのドアを叩くことはありません。
「病棟のスター」が陥る、甘い見通し
「いや、自分は大丈夫だ」と思われたかもしれません。
しかし、考えてみてください。
- 明日、生後6ヶ月の赤ちゃんの乳児健診を、自信を持って行えますか? お母さんの不安に寄り添い、発達に関する的確なアドバイスができますか?
- 「全身に蕁麻疹が出た」という患者さんを診て、ステロイドの塗り薬と抗ヒスタミン薬を適切な強さと量で処方できますか?
- 自転車で転んで膝をパックリ切った小学生の傷を、ためらわずに洗浄し、縫合できますか?
- 糖尿病と高血圧と脂質異常症を併発している高齢の患者さんの、生活全体を俯瞰したマネジメントができますか?
これらは、地域のかかりつけ医にとっては「日常茶飯事」です。
病棟で専門性を磨き、華々しく活躍してこられた先生ほど、こうした「プライマリ・ケアの基本」を学ぶ機会を失っているケースが、驚くほど多いのです。(※2)
そのスキルギャップに気づかないまま開業することは、羅針盤も海図も持たずに、荒波に小舟で乗り出すようなものです。 このままでは、本当に危ない。
先生のお考え、よく分かります。しかし…
ここまでお読みになり、先生方の中にはこのようにお感じになった方もいらっしゃるかもしれません。
「専門医として長年努力し、誰にも負けない知識と技術を培ってきた自負がある。それを軽視しているのではないか?」
「結局は、不安を煽って研修を売り込みたいだけなのだろう」
そのように感じられるのは、ごもっともです。先生が専門医として積み上げてこられた研鑽とプライドは、何物にも代えがたい尊いものであり、私たちはそれに最大限の敬意を払っています。私たちのメッセージは、決して先生の専門性を否定するものではありません。
私たちが伝えたいのは、危機感だけではなく、むしろ希望です。
優れた医療技術が、患者さんを救うための強力な「エンジン」だとすれば、経営の知識は、そのエンジンを目的地まで安全かつ効率的に運び、最高のパフォーマンスを発揮させるための「ナビゲーションシステム」や「質の高い燃料」です。
どれだけ高性能なエンジンを積んでいても、進むべき道が分からなければ遭難し、燃料が尽きればその場で止まってしまいます。先生が持つ素晴らしい「エンジン」を、理想の医療という目的地へ確実に届け、輝かせ続けるために、経営というもう一つの重要なツールが存在するという事実をお伝えしたいのです。
この研修は、先生の専門性を軽視するものではなく、むしろ、その価値を社会で最大限に発揮し、盤石な基盤の上で理想の医療を追求し続けていただくためにこそ、存在しています。
成功への最短ルートは「急がば回れ」
では、どうすればいいのか?
答えはシンプルです。「開業前に、かかりつけ医として必要なスキルを、実践的に学ぶ」しかありません。
「でも、今さらどこで…?」
その答えが、私たちの「総合診療を経営を学ぶ 開業前研修プログラム」です。
当院では、先生の専門性を尊重しつつ、開業後に必ず直面する、しかし独学では決して身につかないスキルを、給与を得ながら集中的に習得できます。
この研修で、あなたは以下の「門番」としての武器を手に入れます:
- 小児科診療: よくある感染症の見極め、予防接種、乳児健診など、保護者が安心して頼れるスキル
- 皮膚科診療: 湿疹、蕁麻疹、帯状疱疹など、日常で頻発する皮膚疾患への対応力
- 軽微な外傷処置: 縫合や創傷管理など、地域で頼られる「ちょっとした外科」の技術
- 多疾患管理: 複数の慢性疾患を持つ患者さんを、生活背景まで含めて総合的にマネジメントする本物の「総合診療力」
これらのスキルは、現場で、経験豊富な指導医のフィードバックを受けながらでなければ、決して身につきません。
「これはどう判断すれば?」「この処方で合っている?」…その場で私が直接フィードバックします。 先生が一人で悩み、立ち往生することはありません。
以下は、現在研修されている先生からの感想です。
💬 実際に研修中の先生から届いた声
「昨日は様々な症例を勉強させていただき、ありがとうございました!
本などで勉強しても、実臨床になると本当に多彩でまだまだ分からないことばかりですので、また改めてお時間ある時にフィードバック頂けましたら幸いです!」
(現在研修中のS先生より)
あなたの輝かしい専門医としての経験に、この「地域で戦うための実践スキル」が加わった時、あなたは初めて、他の誰にも真似できない、患者さんからもスタッフからも愛される、盤石なクリニックを築くことができるのです。
さあ、目を逸らさず、ご自身の未来のために賢明な一歩を踏み出しませんか?
このまま開業するのは“ヤバい”かも…と感じた先生へ。
参考文献
- (※1) 厚生労働省. 「上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」報告書. 2018年. (地域におけるかかりつけ医のゲートキーパー機能の重要性について言及). https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000213300.html
- (※2) 一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会. 「新・家庭医療専門医ポートフォリオ Ver.2.0」. (家庭医療・総合診療の専門医に求められる能力・スキルセットを定義しており、臓器別専門医とは異なる広範な能力が求められることを示唆している). https://www.primary-care.or.jp/nintei/pdf/fp_portfolio_v2.pdf