「良いスタッフを採用できれば、クリニック運営はうまくいく」
そう考えている若手医師の先生は、少なくないと思います。
しかし、実際にクリニックを運営していると、採用はゴールではなく、あくまでスタートだと実感します。
どれだけ人柄の良いスタッフを採用できたとしても、院長の考えが伝わっていない、業務の目的が共有されていない、忙しい時にスタッフ同士の目線がずれている状態では、少しずつ組織は不安定になります。
「朝礼では何を話せばよいのか」
「スタッフの様子がおかしい時、どう声をかければよいのか」
「面談をするとしても、どんな順番で話せばよいのか」
開業を目指す先生ほど、このような不安を感じるのではないでしょうか。
この記事では、開業医がスタッフを育てるために大切な、採用後の教育、朝礼、理念共有、面談、フィードバックについて、実際のクリニック運営の視点からお伝えします。
目次
- 開業医がスタッフを育てるには|採用後の教育・朝礼・面談で組織をつくる方法
- 実際のクリニック運営で学んできたことをお伝えします
- 開業前研修の実績
- 採用はゴールではなく、組織づくりのスタートです
- 開業医がスタッフ教育で悩みやすい理由
- 当院では朝礼を「方向をそろえる場」として使っています
- 朝礼で共有していること
- 理念やミッションは、声に出して確認することに意味があります
- スタッフの様子がおかしい時は、早めに面談する
- 面談は「叱る場」ではなく「ずれを修正する場」です
- フィードバックは人格ではなく、行動に対して行う
- フィードバックの伝え方
- 採用・教育・面談の考え方を、まず記事で整理したい先生へ
- 「そこまで院長がやる必要がありますか?」という疑問について
- スタッフが育つクリニックは、患者さんにも選ばれやすくなります
- 開業前に、実際の朝礼やスタッフ連携を見ておく意味
- まとめ
- 採用後の教育・朝礼・面談を、実際の現場で学びませんか?
開業医がスタッフを育てるには|採用後の教育・朝礼・面談で組織をつくる方法
皆さん、こんにちは。あまが台ファミリークリニック院長の細田です。

私は家庭医療専門医として、地域医療の最前線で25年、内科・小児科・皮膚科・糖尿病内科などを幅広く診療してきました。(日本糖尿病学会正会員、日本プライマリケア連合学会 家庭医療専門医、日本睡眠学会所属、日本肥満学会所属)
クリニックを開業してから強く感じているのは、院長の仕事は診療だけでは終わらないということです。もちろん、医師として良い医療を提供することは大前提です。
しかし、クリニックは医師一人で成り立つものではありません。
受付、看護師、医療事務、管理栄養士、診療補助スタッフが同じ方向を向き、患者さんに丁寧に関わることで、初めて良いクリニックになります。
そのために必要なのが、採用後の教育、日々の情報共有、理念の浸透、そして必要なタイミングでの面談です。
実際のクリニック運営で学んできたことをお伝えします
私は2019年9月に、千葉県長生郡長生村であまが台ファミリークリニックを開業しました。
開業からもうすぐ7年になり、現在は年間約2.5万人の患者さんを診察しています。
クリニック運営は、院長一人の力だけで成り立つものではありません。
現在は、非常勤医師5名、看護師4名、管理栄養士5名、医療事務2名、クリーンスタッフ1名、採用秘書担当1名、外部コンサルタントの教育係2名とともに、日々の診療と組織づくりに取り組んでいます。
だからこそ、この記事でお伝えする内容は、理論だけの話ではありません。
実際に採用し、教育し、スタッフと向き合い、悩みながらクリニックを運営してきた中で大切だと感じていることです。

開業前研修の実績
現在、当院で研修を受けた3名の先生が、それぞれご自身のクリニックを開業し、地域医療の現場で活躍されています。
また、現在も2名の医師が当院で研修を行い、外来診療、クリニック経営、集患、スタッフ採用、組織づくりについて、実際の現場を通して学んでいます。
開業前研修では、単に知識をお伝えするだけではありません。将来、自分のクリニックを開業した時に、患者さんに選ばれ、スタッフと信頼関係を築き、地域で長く続けられる医療機関をつくるための考え方と実践を共有しています。

採用はゴールではなく、組織づくりのスタートです
スタッフ採用では、人柄やチーム適性を見ることが大切です。
しかし、良い人を採用できたとしても、その後の関わり方が曖昧であれば、スタッフは迷います。
「患者さんにどのように接してほしいのか」
「忙しい時に、何を優先して動けばよいのか」
「院長はどんな判断基準で診療や運営をしているのか」
これらが伝わっていないと、スタッフはそれぞれの経験や感覚で動くことになります。
もちろん、それぞれが良かれと思って動いています。
ただ、向いている方向が少しずつずれると、やがて患者対応、スタッフ同士の連携、診療の流れに影響が出てきます。
だからこそ、開業医は「採用して終わり」ではなく、「採用した後にどう育てるか」まで考えておく必要があります。
開業医がスタッフ教育で悩みやすい理由
勤務医時代は、病院という大きな組織の中で働いている先生が多いと思います。
病院では、看護師長、事務長、教育担当、各部署の責任者がいて、組織の仕組みがある程度できています。
しかし、クリニックを開業すると、院長自身が組織づくりの中心になります。
スタッフに何を伝えるのか。
どのタイミングで声をかけるのか。
注意する時に、どのように伝えるのか。
不満や違和感を、どう早めに拾うのか。
これらを院長が考えなければなりません。
ここで多くの先生が悩みます。
「診療だけでも忙しいのに、スタッフ教育まで考える余裕があるのだろうか」
そう感じるのは自然なことです。
ただ、ここを後回しにすると、結果的に院長自身がもっと疲弊します。
スタッフ教育を仕組みにしないまま運営すると、同じ説明を何度も繰り返したり、問題が大きくなってから対応したり、感情的なやりとりになってしまうことがあります。
だからこそ、開業前から「どうスタッフを育てるか」を学んでおくことは、院長自身を守ることにもつながります。
当院では朝礼を「方向をそろえる場」として使っています

当院では、朝礼を単なる連絡事項の共有の場とは考えていません。
もちろん、その日の診療体制、予約状況、注意が必要な患者さん、検査予定などの情報共有は大切です。
しかし、それだけではなく、スタッフ全員が向かうべき方向を確認する場として朝礼を使っています。
当院では、朝礼の中で5分間勉強会を行うことがあります。
疾患の知識、患者さんへの説明の仕方、接遇、診療の流れ、チーム連携など、日々の診療で必要なことを短く共有します。
長時間の研修を毎日行うのは現実的ではありません。
しかし、5分であれば継続しやすい。
そして、短い学びでも積み重なると、スタッフ全体の共通認識になります。
朝礼で共有していること
- その日の診療体制や予約状況
- 混雑が予想される時間帯の注意点
- 患者さんへの声かけや接遇のポイント
- 感染症や生活習慣病など、診療でよく出会う知識
- スタッフ同士の連携で意識してほしいこと
- 理念やミッションに沿った行動の確認
朝礼は、院長が一方的に話すだけの場ではありません。
クリニックとして何を大切にするのかを、毎日少しずつ確認する場です。
最後はエアタッチをして笑顔でおわります。
理念やミッションは、声に出して確認することに意味があります
当院では、理念やミッションを一度に全部伝えるのではなく、1日1つずつ取り上げて、スタッフ全員で声に出して確認します。
これは、きれいな言葉を唱えるためではありません。
クリニックが向かうべき方向からずれないためです。
忙しい外来では、どうしても目の前の業務に追われます。
会計を早く終わらせる。
検査を回す。
電話対応をする。
次の患者さんを案内する。
どれも大切です。
しかし、業務だけに意識が向きすぎると、「なぜこの仕事をしているのか」が薄れてしまうことがあります。
患者さんに安心してもらうために何をするのか。地域の方に信頼されるクリニックであるために、どんな態度が必要なのか。スタッフ同士が支え合うために、どんな声かけをするのか。
こうした原点を確認するために、理念やミッションを声に出すことには意味があります。
人は、忙しくなると悪意がなくても視野が狭くなります。
だからこそ、短い時間でも毎日繰り返し、向かう方向を確認することが大切だと考えています。
スタッフの様子がおかしい時は、早めに面談する
スタッフ教育で大切なのは、問題が大きくなってから注意することではありません。
その前に、小さな変化に気づくことです。
たとえば、いつもより表情が暗い。
返事が少し弱い。
周囲との会話が減っている。
ミスが増えている。
患者さんへの対応に少し硬さがある。
こうした変化に気づいた時、私はできるだけ早めに面談することを大切にしています。
ここで大事なのは、いきなり問い詰めないことです。
「最近、どう?」
「何か困っていることはある?」
「仕事の中で負担になっていることはない?」
私だけでなく、外部コンサルタントが実施することもあります。

まずは、責めるのではなく、状態を確認する。
人を育てる専門家からも、面談では最初に相手の状態を受け止めることが大切だと助言を受けたことがあります。
私自身も、スタッフに何かを伝える前に、まず相手が何に困っているのか、何を感じているのかを聞くことを意識しています。
面談で最初に意識したいこと
- 最初から注意や指導で入らない
- まず相手の体調や気持ちを確認する
- 何に困っているのかを具体的に聞く
- 院長の解釈だけで決めつけない
- 最後に次の行動を一緒に確認する
面談は「叱る場」ではなく「ずれを修正する場」です
面談というと、スタッフ側は「何か怒られるのではないか」と感じることがあります。
院長側も、「どう伝えればよいか分からない」と悩むことがあります。しかし、面談の目的は叱ることではありません。
大切なのは、ずれを早めに修正することです。院長が見えている景色と、スタッフが感じている景色は違います。
院長は全体の流れを見ています。一方でスタッフは、受付、診療補助、会計、電話対応など、それぞれの立場から現場を見ています。
そのため、同じ出来事でも受け止め方が違うことがあります。
だからこそ、面談では一方的に「こうしなさい」と伝えるだけでは不十分です。
まず相手の見えている景色を聞く。
そのうえで、クリニックとして大切にしたいことを伝える。
最後に、次にどう行動するかを確認する。
この順番が大切です。
フィードバックは人格ではなく、行動に対して行う
スタッフに何かを伝える時、特に注意したいのが、人格を否定しないことです。
「あなたは気が利かない」
「あなたは協調性がない」
このような言い方をすると、相手は防御的になります。
伝えるべきなのは、人格ではなく行動です。
たとえば、次のように伝えます。
フィードバックの伝え方
- 「あなたは冷たい」ではなく、「患者さんへの返答が少し短く聞こえたかもしれない」と伝える
- 「全然周りを見ていない」ではなく、「会計が混んでいる時は、受付の様子も見てもらえると助かる」と伝える
- 「やる気がない」ではなく、「最近少し表情が疲れて見えるけれど、何か負担になっていることはある?」と確認する
- 「何度言ったら分かるの」ではなく、「次回から同じ場面では、まずここを確認してほしい」と具体化する
指摘は必要です。
しかし、指摘の仕方によって、相手が成長することもあれば、心を閉ざすこともあります。
院長として大切なのは、感情をぶつけることではなく、次の行動につながる伝え方をすることです。
採用・教育・面談の考え方を、まず記事で整理したい先生へ
スタッフ採用の全体像や、人柄・面接ポイントについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
開業前に、採用で何を見るべきか、採用後にどう育てるべきかを整理したい先生は、あわせてご覧ください。
まずは記事を通して、スタッフ採用と育成の考え方を整理してみてください。
「そこまで院長がやる必要がありますか?」という疑問について
ここまで読むと、先生の中にはこう感じる方もいるかもしれません。
「スタッフ教育や面談まで、院長が細かく関わる必要があるのでしょうか」
その疑問は、とても自然です。
医師としては、まず診療に集中したいと思うのは当然です。
しかし、開業医は医師であると同時に、組織の責任者になります。一方でスタッフが増えてくると、物理的に難しい時間的な制限で難しくなってくることは当然あります。開業前研修に来ている医師の教育や医師会の仕事など、忙しい時は難しいです。そのために当院では2人の外部コンサルタントを雇い、面接面談をしてもらうことも少なくありません。
スタッフが迷っている時、誰が方向を示すのか。
患者さんへの対応でずれが出た時、誰が基準を伝えるのか。
スタッフ同士の関係に違和感が出た時、誰が早めに気づくのか。
最終的には院長です。
だからといって、院長がすべてを背負い込む必要はありません。
大切なのは、日々の朝礼、短い勉強会、理念の共有、必要な時の面談を通して、スタッフが自分たちで考え、動ける組織をつくることです。
その仕組みを作ることが、院長の大切な役割だと考えています。
スタッフが育つクリニックは、患者さんにも選ばれやすくなります
スタッフ教育や面談は、スタッフのためだけに行うものではありません。
最終的には、患者さんの安心につながります。
受付での一言。
採血前の声かけ。
診察室への案内。
会計時の説明。
電話対応の印象。
患者さんは、医師の診察だけでクリニックを評価しているわけではありません。
クリニック全体の雰囲気、スタッフの表情、説明の分かりやすさ、安心感を含めて見ています。
だからこそ、スタッフが育つことは、クリニックの信頼につながります。
院長が理念を伝え、朝礼で方向をそろえ、必要な時に面談し、スタッフが少しずつ成長していく。
その積み重ねが、患者さんに選ばれるクリニックづくりにつながると考えています。
開業前に、実際の朝礼やスタッフ連携を見ておく意味
朝礼、5分間勉強会、理念共有、面談、フィードバック。
これらは文章で読むだけでも、ある程度は理解できます。
しかし、実際の空気感は現場で見ないと分かりにくい部分があります。
院長がどのような言葉でスタッフに伝えているのか。
スタッフがどのように反応しているのか。
忙しい外来の日に、どう声をかけ合っているのか。
ちょっとした違和感がある時に、どのタイミングで面談につなげているのか。
これらは、開業前に一度見ておくと、自分のクリニックをつくる時の具体的なイメージになります。
当院の開業前研修では、外来診療だけではなく、朝礼、情報共有、スタッフ連携、採用、教育、組織づくりも現場で学んでいただけます。
まとめ
開業医にとって、スタッフ採用はとても大切です。
しかし、採用はゴールではありません。
採用したスタッフに、クリニックの理念やミッションを伝え、日々の朝礼や短い勉強会を通して方向をそろえ、必要な時には早めに面談することが重要です。
スタッフ教育で大切なのは、強く支配することではありません。
スタッフが安心して働き、患者さんに丁寧に向き合い、チームとして成長できる環境をつくることです。
そのためには、院長自身が「どんなクリニックをつくりたいのか」を言葉にし続ける必要があります。
開業前に、実際のクリニックで朝礼、面談、スタッフ連携を見ておくことは、将来の組織づくりに大きく役立つと考えています。
採用後の教育・朝礼・面談を、実際の現場で学びませんか?
あまが台ファミリークリニックでは、開業を目指す若手医師の先生に向けて、外来診療、クリニック経営、集患、スタッフ採用、組織づくりを学べる開業前研修を行っています。
朝礼で何を話すのか、スタッフにどう理念を伝えるのか、面談でどのように声をかけるのか。
文章だけでは伝わりにくい現場の空気を、まずは1日見学・体験入職でご確認ください。
無理な勧誘はありません。まずは先生ご自身の目で、診療・採用・組織づくりの現場をご確認ください。