「将来はクリニックを開業したいけれど、何から準備すればよいのか分からない」
「勤務医として診療はしてきたけれど、開業医として経営やスタッフ採用までできるのか不安」
「開業前に、診療以外で何を学んでおくべきか知りたい」
これから開業を考えている若手医師の先生であれば、このような不安を感じることがあるのではないでしょうか。
クリニック開業というと、物件、内装、医療機器、資金計画、電子カルテなどに目が向きやすいと思います。
もちろん、それらは非常に大切です。
しかし、実際に開業してみると、それだけでは足りません。
開業後に本当に大変なのは、患者さんに来てもらうこと、スタッフを採用して育てること、院長自身が疲弊しない診療体制を作ること、そして地域で長く選ばれるクリニックを作ることです。
この記事では、勤務医から開業医になる前に準備すべきことを、現場目線のチェックリストとして整理します。
目次
- 医師が開業前に準備すべきこと|勤務医から開業医になる前のチェックリスト
- 実際のクリニック運営で学んできたことをお伝えします
- 開業前研修の実績
- 開業前準備は「物件探し」から始めない方がよい
- 最初に考えたい5つの質問
- チェック1:診療スキルは開業後の現実に合っているか
- チェック2:開業資金と収支を現実的に考えているか
- チェック3:集患を「開業後に考えればよい」と思っていないか
- チェック4:スタッフ採用の基準を決めているか
- スタッフ採用の入口から整理したい先生へ
- チェック5:採用後の教育と組織づくりを考えているか
- チェック6:院長一人で抱え込まない仕組みを作っているか
- チェック7:開業後の院長の働き方を想像しているか
- チェック8:開業前に現場を見る機会を作っているか
- 「開業準備は専門家に任せればよいのでは?」という疑問について
- スタッフ採用・面接・教育まで具体的に考えたい先生へ
- まとめ
- 開業前に、現場でしか分からない準備を確認しませんか?
医師が開業前に準備すべきこと|勤務医から開業医になる前のチェックリスト
皆さん、こんにちは。あまが台ファミリークリニック院長の細田です。
私は家庭医療専門医として、地域医療の最前線で25年、内科・小児科・皮膚科・糖尿病内科などを幅広く診療してきました。
開業前の先生から相談を受けると、多くの先生が「診療にはある程度自信があるけれど、開業医として何を準備すればよいか分からない」と感じているように思います。
これは自然なことです。
勤務医時代は、病院や医療機関の仕組みの中で診療をします。
しかし開業すると、診療だけでなく、経営、採用、スタッフ教育、集患、患者対応、組織づくりまで、院長自身が考える立場になります。
だからこそ、開業前には「物件や資金」だけではなく、「自分がどのような医療を、どのようなチームで、どのように地域へ届けるのか」まで準備しておく必要があります。
実際のクリニック運営で学んできたことをお伝えします
私は2019年9月に、千葉県長生郡長生村であまが台ファミリークリニックを開業しました。
開業からもうすぐ7年になり、現在は年間約2.5万人の患者さんを診察しています。
クリニック運営は、院長一人の力だけで成り立つものではありません。
現在は、非常勤医師5名、看護師4名、管理栄養士5名、医療事務2名、クリーンスタッフ1名、採用秘書担当1名、外部コンサルタントの教育係2名とともに、日々の診療と組織づくりに取り組んでいます。
だからこそ、この記事でお伝えする内容は、理論だけの話ではありません。
実際に採用し、教育し、スタッフと向き合い、悩みながらクリニックを運営してきた中で大切だと感じていることです。

開業前研修の実績
現在、当院で研修を受けた3名の先生が、それぞれご自身のクリニックを開業し、地域医療の現場で活躍されています。

また、現在も2名の医師が当院で研修を行い、外来診療、クリニック経営、集患、スタッフ採用、組織づくりについて、実際の現場を通して学んでいます。

開業前研修では、単に知識をお伝えするだけではありません。将来、自分のクリニックを開業した時に、患者さんに選ばれ、スタッフと信頼関係を築き、地域で長く続けられる医療機関をつくるための考え方と実践を共有しています。
開業前準備は「物件探し」から始めない方がよい
開業を考え始めると、まず物件や資金計画から動きたくなる先生も多いと思います。
もちろん、物件や資金計画は重要です。
しかし、最初に考えるべきことは「どこで開業するか」だけではありません。
もっと大切なのは、「自分はどのようなクリニックを作りたいのか」です。
ここが曖昧なまま物件を決めると、あとで診療内容、スタッフ数、導線、設備、集患方法が噛み合わなくなることがあります。
たとえば、生活習慣病を中心に診たいのか。小児科や皮膚科も幅広く診たいのか。総合診療型で地域の入口になるクリニックを目指すのか。専門特化型で特定疾患に絞るのか。
この方向性によって、必要な診察室、検査機器、看護師の人数、医療事務の役割、Webサイトの設計、予約システムまで変わります。

開業準備は、家を建てる前に設計図を描く作業に似ています。
どんな家に住みたいのかを決めずに、土地や家具だけを選んでも、住みやすい家にはなりません。
クリニックも同じです。
まずは、自分が地域でどのような医療を提供したいのかを言葉にすることが、開業前準備の第一歩です。
最初に考えたい5つの質問
- どの診療科目を中心にするのか
- どんな患者さんに来てほしいのか
- 1日に何人くらいの患者さんを診たいのか
- 院長一人で診るのか、複数医師体制を目指すのか
- 10年後も続けられる働き方になっているか
チェック1:診療スキルは開業後の現実に合っているか
勤務医時代に専門診療をしてきた先生でも、開業すると想定以上に幅広い相談を受けます。
内科だけでなく、皮膚症状、小児の相談、軽い外傷、生活習慣病、睡眠、メンタルの相談、健診異常、予防接種など、地域のクリニックにはさまざまな患者さんが来院します。
特に開業初期は、「この症状はどこに相談したらよいか分からない」という患者さんが来ることもあります。
その時に、すべてを自分だけで解決する必要はありません。
しかし、どこまで自院で診るのか、どこから専門医へ紹介するのかを判断する力は必要です。
開業前には、自分の専門分野だけでなく、地域の外来でよく出会う症状や疾患について、どの程度対応できるかを確認しておくことが大切です。
特に総合診療やプライマリケアの視点は、開業医にとって大きな武器になります。
患者さんは、教科書通りに「専門科ごと」に困っているわけではありません。
体調不良、皮膚症状、子どもの発熱、生活習慣病、不眠、健診異常などが重なって相談されることもあります。
こうした患者さんを最初に受け止め、必要に応じて適切につなぐ力は、開業前に学んでおく価値があります。
チェック2:開業資金と収支を現実的に考えているか
開業前の準備として、資金計画は避けて通れません。
物件取得費、内装費、医療機器、電子カルテ、予約システム、広告費、人件費、運転資金など、開業には多くの費用がかかります。
ここでは、税理士や金融機関、開業支援会社などの専門家の力を借りることも大切です。
ただし、数字だけを見て安心するのは危険です。
「1日何人来れば黒字になるか」という計算は大切ですが、それと同じくらい大切なのが、「その人数を安全に診られる体制があるか」です。
1日60人、80人、100人と患者さんが増えることは、経営上は良いことのように見えます。
しかし、診療導線、スタッフ数、予約設計、検査体制が整っていないまま患者数だけが増えると、待ち時間が長くなり、スタッフが疲弊し、院長自身も余裕を失います。
開業資金のシミュレーションと同時に、患者数が増えた時の現場の動きまで考えておくことが大切です。
チェック3:集患を「開業後に考えればよい」と思っていないか
開業前の先生にお伝えしたいのは、良い医療をしていれば自然に患者さんが集まる、とは考えない方がよいということです。
良い医療は大前提です。
しかし、地域の患者さんに存在を知ってもらえなければ、来院にはつながりません。
Webサイト、Googleビジネスプロフィール、ブログ、YouTube、口コミ、紹介、地域での認知。
こうした導線を、開業前から考えておく必要があります。

集患とは、単に患者さんを集めることではありません。
自分のクリニックがどのような医療を大切にしているのか、どのような悩みに対応できるのか、どのような患者さんに来てほしいのかを、正しく伝える活動です。
開業後に「患者さんが来ない」と焦ってからWebを整えるよりも、開業前から自分の医療の価値を言語化しておくことが大切です。
チェック4:スタッフ採用の基準を決めているか
クリニック開業で、院長が想像以上に悩みやすいのがスタッフ採用です。
看護師、医療事務、管理栄養士、クリーンスタッフなど、どの職種を何人採用するかだけではなく、どのような人を採用するかが非常に重要です。
クリニックは少人数の組織です。
そのため、一人のスタッフの人柄や働き方が、職場全体の雰囲気に大きく影響します。

私が採用で大切にしているのは、患者さんに安心感を与えられるか、スタッフから一緒に働きたいと思われるか、忙しい時でも周囲を不快にしないかです。
スキルや経験は大切です。
しかし、スキルだけで採用を決めると、開業後に人間関係で苦労することがあります。
開業前には、「どのような人と働きたいのか」「どのような人は自院に合わないのか」を言語化しておくことが大切です。
スタッフ採用の入口から整理したい先生へ
開業前に「どんな人を採用すればよいのか」「面接で何を見ればよいのか」と悩む先生は多いと思います。
LINE登録者限定で「スタッフ採用で失敗しないために大切な2つのポイント」という動画をご用意しています。採用の入口から整理したい先生は、まずこちらをご覧ください。
チェック5:採用後の教育と組織づくりを考えているか
良いスタッフを採用できれば、それで終わりではありません。
採用はゴールではなく、組織づくりのスタートです。
開業後は、院長の考えをスタッフに伝え続ける必要があります。
何を大切にするクリニックなのか。患者さんにどのように接してほしいのか。忙しい時に何を優先してほしいのか。
これらが共有されていないと、スタッフ一人ひとりは良かれと思って動いていても、少しずつ方向がずれていきます。
当院では、朝礼や短い勉強会、理念やミッションの確認、月1回の勉強会、必要な時の面談などを通して、スタッフと方向をそろえることを大切にしています。

開業前から、採用後にどう育てるのか、どのように情報共有するのか、スタッフの様子がおかしい時にどう面談するのかを考えておくことは、院長自身を守ることにもつながります。
チェック6:院長一人で抱え込まない仕組みを作っているか
開業医は、医師であると同時に経営者です。
診療、経営、採用、スタッフ教育、集患、患者さん対応をすべて院長一人で抱え込むと、当然しんどくなります。
ですので、開業前から「誰に何を任せるか」を考えておく必要があります。
看護師に任せること。医療事務に任せること。
管理栄養士に任せること。外部専門家に相談すること。非常勤医師と協力すること。
こうした役割分担を考えておくことで、院長自身が診療と経営の両方を冷静に見られるようになります。
特に、診療報酬、接遇、採用、スタッフ面談、労務などは、院長だけで抱え込まず、専門家の力を借りることも選択肢です。
院長一人で頑張るクリニックではなく、チームで運営できるクリニックを目指すことが、長く続けるためには重要です。
チェック7:開業後の院長の働き方を想像しているか
開業前は、「開業すれば自分の理想の医療ができる」と考えやすいと思います。
それは間違いではありません。
しかし、開業後は自由になる一方で、責任も増えます。
患者さんが来ない不安、スタッフが辞める不安、クレーム対応、資金繰り、採用、教育、診療の質の維持。
これらを長く続けるためには、院長自身が疲弊しすぎない働き方を設計する必要があります。
1日何人までなら安全に診られるのか。
どの時間帯に予約を入れるのか。
どの業務をスタッフに任せるのか。
週にどのくらい休むのか。
院長が倒れない仕組みを作ることは、患者さんとスタッフを守ることにもつながります。
チェック8:開業前に現場を見る機会を作っているか
開業準備は、本やセミナーでも学べます。
資金計画、物件選び、医療機器の選定、Webマーケティングなど、学ぶべきことはたくさんあります。
しかし、実際のクリニックの空気は、現場で見ないと分かりにくい部分があります。
- 朝のスタッフの動き
- 患者さんが増えた時の受付の混み方
- 医師と看護師、医療事務の連携
- 患者さんへの声かけ
- 院長がどの場面で判断しているのか
- スタッフ採用や教育の考え方
- 診療後にどのように改善を積み重ねているのか
こうした現場を見ることで、自分が開業した時のイメージがかなり具体的になります。
開業前研修は、単に診療を見学する場ではありません。
将来、自分が院長としてどのような判断をし、どのような組織を作り、どのように地域で選ばれるクリニックを作るのかを考える場です。

「開業準備は専門家に任せればよいのでは?」という疑問について
ここまで読むと、先生の中にはこう感じる方もいるかもしれません。
「開業準備は、税理士、開業支援会社、医療機器業者に相談すればよいのではないか」
その考えも大切です。
資金計画、借入、物件選定、医療機器の見積もりなどは、専門家の力を借りるべきです。
ただし、専門家が作る数字のシミュレーションだけでは、開業後の現場の疲弊感や、スタッフとの関係性、患者さんの流れ、院長の働き方までは見えにくいことがあります。
開業前に本当に必要なのは、数字の準備と現場の準備の両方です。
数字を見ること。そして、実際に外来がどう流れるのか、スタッフがどう動くのか、患者さんがどう来院するのか、院長がどこで疲れるのかを想像すること。
この両方を行うことで、開業後の解像度が上がります。

スタッフ採用・面接・教育まで具体的に考えたい先生へ
ここまで、開業前には診療スキル、資金、集患、スタッフ採用、組織づくり、院長の働き方まで含めて準備する必要があるとお伝えしました。
その中でも、開業後に多くの院長が悩みやすいのがスタッフ採用と組織づくりです。
採用、面接、教育についてさらに詳しく知りたい先生は、以下の記事もあわせてご覧ください。
まずはこの記事で開業準備の全体像を整理し、必要に応じて採用・面接・教育を深掘りしてみてください。

まとめ
医師が開業前に準備すべきことは、物件や資金計画だけではありません。
勤務医から開業医になる前には、次のような項目を整理しておくことが大切です。
- どのようなクリニックを作りたいのか
- 自分の診療スキルは開業後の現実に合っているか
- 開業資金と収支を現実的に考えているか
- 集患を開業前から準備しているか
- スタッフ採用の基準を決めているか
- 採用後の教育と組織づくりを考えているか
- 院長一人で抱え込まない仕組みを作っているか
- 開業後の院長自身の働き方を想像しているか
- 開業前に実際の現場を見る機会を作っているか
開業はゴールではありません。
開業してから、地域で患者さんに選ばれ、スタッフと信頼関係を築き、長く続けられるクリニックを作ることが本当の課題です。
これから開業を考えている先生は、ぜひ数字だけでなく、診療、採用、集患、組織づくり、院長の働き方まで含めて準備してみてください。
開業前に、現場でしか分からない準備を確認しませんか?
あまが台ファミリークリニックでは、開業を目指す若手医師の先生に向けて、外来診療、クリニック経営、集患、スタッフ採用、組織づくりを学べる開業前研修を行っています。
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